垣間見えたアメリカの調停姿勢と欧州安全保障のリスク要素

 本稿では、リーク記事として伝えられるアメリカの調停案の内容について、ザポリージャ原子力発電所の管理にアメリカが固執している点について考える。戦後にウクライナは、ロシアとNATOの間の中間地帯に位置する軍事有力国となる。またそれを売りにしなければ、ウクライナは生き残れない。欧州の安全保障地図は大きく変わるということだ。
篠田英朗 2025.04.23
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 先の日曜日に、漫画家の小林よしのりさんが主宰している『ゴー宣道場in横浜』というイベント企画に、登壇者として参加させていただいた。当日の様子は、ニコニコ動画やYoutubeで視聴することができる。

https://x.com/ShinodaHideaki/status/1914206348725879110

 小林さんに加えて、法哲学者の井上達夫さんと弁護士の菅野志桜里さんとともに登壇した。テーマはロシア・ウクライナ戦争で、いくつか興味深く刺激を受ける論点があった。その一つは、質疑応答の時間で出てきた、核武装の件であろう。

 質問は、ロシア・ウクライナ戦争を見て、日本の核武装をどう考えるか、というものだったような気がする。その背景は、ウクライナはソ連時代の核兵器施設を放棄してしまったので、ロシアに侵略されたのではないか、という文脈の話だった。

 そんな折、トランプ政権の停戦調停案に関するリーク記事が、『ウォールストリート・ジャーナル』から出てきた。米国政府が、ロシアのクリミア併合を承認し、ザポリージャ原子力発電所を管理する、という見出しで、報道されている。わりあいユニークな内容である。

 これについてはまずウクライナが合意しないという報道が出ている。実際にまとまるかについては、まだ疑問符がつくだろう。ただ、この内容については、アメリカの関心対象を分析するうえで、特徴的な点があることには、注目せざるを得ない。

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続きは、2219文字あります。
  • アメリカの原発「取引」への関心
  • なぜアメリカが原発を管理する意味

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