ガザ危機勃発から2年~西洋の失墜を直視する~
ハマスの10・7攻撃から2年。筆者は当時、ガザの中学生3人の広島訪問を調整中で、事件は帰国直前に起きた。講演したイスラム大学も空爆で壊滅し衝撃を受けた。ガザ危機は欧米の道徳的権威を崩し、21世紀の転換点となった。日本の無関心さが懸念される。
篠田英朗
2025.10.07
読者限定
2023年10月7日
ハマスの10・7攻撃から、2年がたった。2年前のことは、よく覚えている。私は、ガザの中学生3人の日本訪問の調整にあたる活動をしていたところだった。半年前の2023年3月にガザを訪れた際、UNRWAさんなどと協議をして、中学生3名の広島訪問の調整をやらせてもらうことになった。訪問する高校を二つ選定し、夏の間に広島に行って、受け入れのお願いをさせていただいていた。その中学生が広島訪問などの日本でのプログラムを終えて離日するのが、10月8日だった。つまり10月7日の事件は、中学生たちがガザに戻る直前に勃発した。結局、中学生の方々は、飛行機でアンマンまで戻り、そこからガザには戻らず、新たな中学に入ることになってしまった。
私自身は、2023年3月にガザに行ったばかりだった。イスラム大学というガザで最も優秀とされていた大学で講演をする機会をいただいた。講演前には、大学の教員の方々から、大変に優れた大学の活動について教えていただいた。欧州や中東の大学との間に、数々の学術交流協定も持っていた。おそらくガザの若者にとって、大学を通じた知的交流は、ガザの外の世界とふれることのできるかけがえのないチャンネルだったはずだ。私の講演中の学生の方々の態度も非常に熱心だった。