ビジネスマンのワークショップの成果としての政治思想文書化したNSS:トランプ政権「国家安全保障戦略(NSS)」(3)
2025年版NSSは、後半の地域別政策よりも、前半で「戦略とは何か」を原理的に問い直す思想文書的性格が際立つ部分において、大きな独自性を持つ。過去の否定を前提に、目的と手段の整合としての戦略を打ち出そうとする姿勢は、ビジネスマン大統領のプロジェクト立案の様子を映し出したものだと言えるだろう。
篠田英朗
2025.12.15
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NSSの理論的骨格
トランプ政権「国家安全保障戦略(NSS)」については、後半の地域ごとの政策論について、個別案件を強調する形で見出しを付けて、メディアが取り上げることが多い。細切れにしないと記事が書けない、という事情があるので、仕方ないところはある。だが実際のNSSは、ほぼ半分が、理論的な描写からなる原則論で形成されている。トランプ政権の政策思想を体系的に説明している文書として、非常に興味深い。
そこで今回は、冒頭から7頁までの「戦略とは何か?」、「アメリカは何を求めるべきか?」、「アメリカが持つ手段は何か?」の三つの節について、概観する作業を行ってみたい。
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続きは、4407文字あります。
- NSSが語る過去のアメリカの迷走
- 三つの問い
- 第一の問い:目的
- 第二の問い:手段
- 目的と手段:ビジネスマンのプロジェクト立案
- 2025年版NSSの「思想文書」としての独自性
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