学者のSNSとの付き合い方に関する雑感

学者の使命は短期的事象に流されず長期的構造を分析することにある。SNSは情報収集や発信の利点を持つ一方、党派化や人気取りを誘発し、学問的視野を狭める危険がある。とりわけ国際情勢をめぐるイデオロギー的分極化の中で立場を固定化することは長期的リスクとなるため、距離を保ち主体的に関わる必要がある。
篠田英朗 2026.03.02
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長期的な構造的傾向を分析することの価値

 先月、企業研修セミナーでトッドの著作を扱い、『The Letter』でも何度か触れた。彼の魅力は、構造的要因を摘出し、長期的傾向を見抜いて強調できる点にある。

 学者はジャーナリストや、最近の言い方でいえばSNSインフルエンサーやユーチューバーとは異なる存在である。その意味で、トッドのような人物に私は強い魅力を感じる。

 たとえば『The Letter』で取り上げてきた金価格の高騰も、基軸通貨ドルの問題との関係で論じてきたが、1月頃の急騰は投機性の高まりを示す現象ではあったとしても、長期的構造要因を示していたとは言い難い。実際、その後の金価格は再び従来の水準と傾向に回帰している。短期的投機的事情と、長期的構造的事情を、切り分けて理解することの重要性を感じさせる事例だ。

 あらためて、学者の社会的に要請される一つの重要な役割は、長期的・構造的要因を分析することにあると感じる。とりわけ自分の関心において、それを痛感する。

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