日本のウクライナ感情コミットの地政学リスク

 日本政府にとってウクライナ支援は特別案件だ。外務省・防衛省などが、一枚岩になって支援を続けてきた。今やウクライナ自衛隊派遣論も見られる。異論を許さない感情的な雰囲気があるのは、人事にも影響しているからだろう。だが情勢は混沌としている。大丈夫だろうか。
篠田英朗 2025.03.25
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ウクライナへの感情的コミットメント

 トランプ政権のロシア・ウクライナ戦争の停戦調停の努力を見て、欧州諸国は蚊帳の外に置かれた形となった。焦った英・仏が、「平和維持軍」派遣を打ち上げたが、自国の軍人から拙速さを批判されるなど、混乱も広がっている。https://www.telegraph.co.uk/politics/2025/03/23/starmer-ukraine-peacekeeping-plan-political-theatre/ 

 日本国内にも血気盛んなウクライナ自衛隊派遣論がある。https://news.yahoo.co.jp/articles/899c268e632323c1cc4348ba397fca27aa9f264f?page=3

 英仏主導の「平和維持軍」が、自国政府内で拙速な政治劇だと言われている一方、トランプ政権の登場で国連安全保障理事会が米・中・露の主導で決議を採択できる体制になっており、国連を主体にした本物の平和維持軍の展開も可能性がある。どうなるかわからない状況である。

 その不透明な中でも、自衛隊OBを中心とする軍事評論家層などが、かなり強く明確にウクライナに心情的にコミットしており、自衛隊派遣を推進する構えも見せている。

自衛隊とロシア

 もともと冷戦中に創設された自衛隊は、ソ連を仮想敵国の第一にしており、伝統的には北海道に重点を置いた部隊配置から、ロシア語を専門領域とする研究体制なども作ってきていた。冷戦終焉後に、その体制が大きく揺らいだが、2022年のロシアのウクライナ全面侵攻は、時計の針を大きく戻した感がある。

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続きは、2613文字あります。
  • 外務省人事とロシア/ウクライナ
  • ウクライナは省庁の人事・予算の問題

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