「ウクライナは勝たなければならない」主義者のトランプ非難(責任転嫁)について
8月15日の米露首脳会談を前に、日本の「ウクライナ応援団」系専門家やメディアはトランプ批判を強化するが、欧州首脳は停戦努力を歓迎している。戦争の「成熟」点は、2023年半ばに訪れていた。長期戦は国力で勝るロシア有利、米大統領選日程も停戦機会を左右することは織り込み済みだった。トランプ登場は「ウクライナは勝たなければならない」主義の破綻の原因ではなく、むしろ結果である。
篠田英朗
2025.08.12
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ただひたすらトランプ大統領を非難する責任転嫁
「ウクライナは勝たなければならない」「ロシアは負けなければならない」「ウクライナは最後の一人になっても戦い続けるので、この戦争は終わらない」といったことを過去3年余りにわたって力説してきた「ウクライナ応援団」系の国際政治学者や軍事評論家の方々が、8月15日のアラスカにおけるトランプ大統領とプーチン大統領の会談を前にして、一斉にトランプ糾弾の声を強めている。ヨーロッパとともに日本はトランプ大統領の動きに抵抗するべきだ、といったことも主張している。これまで「ウクライナは勝たなければならない」の論陣を張ってきたメディアも、それに同調する趣旨の記事を乱発している。
ただし、実際にEUや欧州諸国の首脳が発している声明を見れば、全てトランプ大統領の停戦努力を歓迎し、称賛するものばかりだ。たしかにウクライナと欧州の利益を忘れないでほしいとも書いているが、それはトランプ大統領の動きに相乗りしたいという意思表明をしたうえでの懇願である。(拙稿「「ウクライナは勝たなければならない」主義の日本の国際政治学者が伝えない欧州」参照)
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- 「ウクライナは勝たなければならない」の呪文
- なぜ私は2023年中が山になる、と言っていたのか
- トランプは破綻の原因ではなく結果
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