新しいモンロー主義 (「トランプは無能」論の地政学リスクその3)
モンロー・ドクトリンへの関心が高まっている。トランプ大統領の姿勢を、アメリカの外交思想の中でとらえようとするときに、どうしてもそれが思い出されるからだ。ただしモンロー・ドクトリンは、実は理解するのが難しい内容と歴史を持っている。ここでは取り急ぎ三つの特徴を列挙しておく。相互錯綜関係回避原則、大陸主義、明白な運命論、である。
篠田英朗
2025.03.16
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相互錯綜関係回避原則
モンロー・ドクトリンは、1823年当時の米国大統領ジェームズ・モンローの一般教書演説の内容が、大きく米国と欧州諸国で取り上げられたために、当初は「モンロー氏の宣言」などと呼ばれていた起源を持つため、現在のような名称で呼ばれている。その思想的淵源は、初代大統領ジョージ・ワシントンの有名な離任演説にある。ワシントン大統領は、アメリカは欧州の事柄に介入するべきではないことを強調した。モンロー大統領は、だから欧州も「新世界」の事柄に介入しないでほしい、という点を強調したので、ドクトリンとして定着した。
ワシントン大統領の教えは、より「孤立主義」としての性格がより濃いものとしてみられるが、モンロー大統領のドクトリン化で「相互」の要素が強調されるようになった。しかも欧州「旧世界」と西半球「新世界」が「相互」性の単位として設定されたので、アメリカは西半球世界の事柄に介入する代わりに、欧州諸国は西半球の諸国の事柄に介入してはいけないので、アメリカは実力行使してでもそれを断固排除するという事情が生まれた。