イスラエルのソマリランド国家承認は何をもたらすか
イスラエルによるソマリランド国家承認は、紅海・アデン湾をめぐる地政学と軍事・諜報拠点確保を狙う動きで、UAEとの連携も背景にある。一方、周辺国や地域機構の反発を招き、ソマリア情勢の不安定化や大国間対立の波及という重大なリスクを伴う。
篠田英朗
2025.12.28
読者限定
イスラエルにとってのソマリランドの価値
イスラエルが、東アフリカのソマリア領内の「未承認国家」であったソマリランドを国家承認した。突然の発表であった。しかし伏線がなかったわけではない。イスラエルがソマリランドに関心を持っているのは、周知の事実であった。なぜ今だったのか、というタイミングは、不明だが、全く文脈がない、ということではない。
最大の理由は、地政学的な計算だ。ソマリランドは、「アフリカの角」地域の北西部に位置し、ジブチに接して、バブ・エル・マンデブ海峡をにらむアデン湾に面した場所にある。イスラエルは、2023年10月のガザ侵攻開始以降、紅海に面したイエメンの首都サヌアを支配地とするフーシー派と軍事的に対峙してきている。アデン湾に面したソマリランドに拠点を置ければ、軍事行動のみならず諜報活動の幅が広がる。国家承認をしてくれる相手を探していたソマリランドの望みをかなえてあげる代わりに、イスラエルが港湾施設の使用権をはじめとして、ソマリランド領内での活動の許可を得ることは、確実だ。