他の論者のNSS解釈について:トランプ政権「国家安全保障戦略(NSS)」(番外編)
『The Letter』で6回にわたってトランプ政権『国家安全保障戦略(NSS)』について扱ったが、最後に「番外編」として、NSSがどのように受け止められているのかについて、ふれておきたい。といっても広範に語られている文書なので、全ての論者の態度を網羅的に扱うことまでをするのは、難しい。そこでアメリカの外交政策を専門的に見ている森聡・慶応大学教授、佐橋亮・東京大学教授、ブルッキングス研究所研究員者グループなどによるコメンタリーを、例示的な題材として見ていく。また一つ一つの論評を紹介していくというよりは、私なりに気になる点を特筆するやり方で、整理を試みたい。
「本当の執筆者」探し
第一に、「本当の執筆者探し」の傾向は、気になる点だ。森教授は、『フォーサイト』掲載の「第2次トランプ政権の2025年国家安全保障戦略を読む(前編):アメリカの「柔軟な現実主義」とは何か」https://www.fsight.jp/articles/-/51812 において、まずNSS執筆陣の構成の分析あるいは推察を行う。まず冒頭で指摘されるのは、「おそらく大統領が戦略の全文に目を通して決裁したわけではない」という断定だ。そのうえで、「実質的な原案作成の作業にあたったのは、NSC(国家安全保障会議)戦略企画担当上級部長だったケヴィン・ハリントンと、国務省政策企画局長だったマイケル・アントン」だとされていることに力点を置く。