他の論者のNSS解釈について:トランプ政権「国家安全保障戦略(NSS)」(番外編)

本稿は、トランプ政権NSSをめぐる他の論者の解釈を見て、①「本当の執筆者探し」への過度な関心や、②外部理論を当てはめて内在的論理を軽視する傾向が強いことを指摘する。そうなると、NSSが大統領を頂点とする組織の意思の表明であることや、目的と手段の整合を軸とする内在論理があることを理解する姿勢が軽視されかねない。まずNSSを正確に理解した上で、日本の国益計算に基づき米国と向き合う姿勢が求められる。
篠田英朗 2025.12.24
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 『The Letter』で6回にわたってトランプ政権『国家安全保障戦略(NSS)』について扱ったが、最後に「番外編」として、NSSがどのように受け止められているのかについて、ふれておきたい。といっても広範に語られている文書なので、全ての論者の態度を網羅的に扱うことまでをするのは、難しい。そこでアメリカの外交政策を専門的に見ている森聡・慶応大学教授、佐橋亮・東京大学教授、ブルッキングス研究所研究員者グループなどによるコメンタリーを、例示的な題材として見ていく。また一つ一つの論評を紹介していくというよりは、私なりに気になる点を特筆するやり方で、整理を試みたい。

「本当の執筆者」探し

 第一に、「本当の執筆者探し」の傾向は、気になる点だ。森教授は、『フォーサイト』掲載の「第2次トランプ政権の2025年国家安全保障戦略を読む(前編):アメリカの「柔軟な現実主義」とは何か」https://www.fsight.jp/articles/-/51812 において、まずNSS執筆陣の構成の分析あるいは推察を行う。まず冒頭で指摘されるのは、「おそらく大統領が戦略の全文に目を通して決裁したわけではない」という断定だ。そのうえで、「実質的な原案作成の作業にあたったのは、NSC(国家安全保障会議)戦略企画担当上級部長だったケヴィン・ハリントンと、国務省政策企画局長だったマイケル・アントン」だとされていることに力点を置く。

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  • 外部概念による分析と内在論理の相対的軽視
  • 何のためにNSSを読むのか

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