誤解されている「トランプ10原則」:トランプ政権「国家安全保障戦略(NSS)」(4)

2025年版NSSは第4章に分量を集中させ、戦略を「目的と手段の接合」として原理的に位置づける構成をとる。トランプ政権は「アメリカ・ファースト」を実務的・現実的原則と定義し、国益明確化、力による平和、非介入、勢力均衡、国内産業重視など10原則を提示。イデオロギー的介入や民主化輸出を退け、大国間の均衡維持を志向する点が核心である。
篠田英朗 2025.12.18
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NSS第4章の奇異な構成

  2025年版NSSは、4章構成だが、最初の3章は、すでに前回見た冒頭から7頁目までの部分で、終わっている。第4章だけで、残りの全体4分の3の分量がある。これは第4章のほとんどが、地域ごとの「戦略」を見ていく内容に費やされているためだ。

 ただしその「戦略(The Strategy)」と題された第4章も、8頁目から15頁目途中までは、一般原理論だ。第4章第1節「原則」、第2節「優先順位」と題されている二つの節から構成されている。

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  • 目的と手段の接合としての戦略
  • トランプ大統領10原則
  • 「10原則」の内容
  • トランプ10原則が示すこと
  • 国際政治学者らの間で残る誤解

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