トランプ政権「国家安全保障戦略(NSS)」(その2):台湾への言及と高市発言
アメリカが高市首相を擁護しているとの見方が広がるが、根拠は乏しい。NSSは台湾の「現状維持」と同盟国の役割拡大を重視し、日本の積極的関与を求める。一方、高市発言は米軍先行を前提としておりNSSの方向性と一致しない。日本国内の右派・左派の対立構図では国際情勢は理解できず、誤解が生じている。
篠田英朗
2025.12.09
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アメリカは高市首相を擁護しているのか
前回の記事では、トランプ政権「国家安全保障戦略(NSS)」における台湾への言及についてまとめた。今後NSSのその他の項目について書き進めていきたいと思っている。ただ、高市首相「台湾有事」発言後の喧騒は収まるところを知らず、さらに「レーダー照射」事件が起こって、日中関係は険悪化の一途をたどっている。そこで『The Letter』において続けてもう一回、台湾問題・日中関係についてふれておくことにする。
米国メディアなどで、習近平国家主席と電話会談をしてすぐに高市首相に電話をしたトランプ大統領が、高市首相に厳しい言葉を投げかけたのではないか、という報道がなされた。これに対して、巷では、そんなはずはない、という抗議の声もあがっている。日頃から高市首相を擁護している類の方々だ。この方々に言わせると、台湾保障実施法案に、トランプ大統領が拒否権発動せず署名したのも、高市首相を擁護する意図の表れなのだという。