ウクライナ政府提案20項目和平案と日本の識者の動向:千々和泰明氏の議論を題材に
本稿は、トランプ政権下で進展する停戦交渉とウクライナ政府の20項目和平案を踏まえ、欧州・日本の疲弊と日本の専門家言説を検討する。とくに千々和泰明氏の議論を題材に、停戦拒否と戦争長期化を正当化する前提――ロシア全面占領意図や「アフガン化」類推――の妥当性を批判し、現実的目標を欠いた支援継続の危うさと専門家の責任を指摘する。
篠田英朗
2025.12.26
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ロシア・ウクライナ戦争の停戦協議が、じりじりと進んでいる。もちろん簡単には達成できない。しかしトランプ政権発足後の11カ月で、大きな変化が訪れたことは否定できない事実であろう。
ウクライナ政府提案20項目和平案
今やゼレンスキー大統領のウクライナ政府も、20項目の和平案(末尾の附録)を出し、ドネツク州に経済特区を設置するといいう対案を出してくるところまで来た。これまでのアメリカ主導の調停案の中で、ドネツク州における非武装中立地帯の設置を通じて停戦ラインを設定する案が有力視されていたことをふまえた対案だ。論点が絞られて、対案に次ぐ対案の提出という流れで、交渉が動いている。
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- 満身創痍の欧州と日本
- ウクライナに戦争を続けさせたい日本の専門家たち
- 千々和泰明氏の議論を題材に
- 千々和氏の議論を支える前提
- ご都合主義の推論だけで多大な資源投入は正当化できない
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