取捨選択の地域政策:トランプ政権「国家安全保障戦略(NSS)」(6)
NSSは地域戦略を取捨選択する。西半球ではモンロー・ドクトリンを再生して経済利潤中心で「卓越」的な地位の確立を狙う。アジアでは「競争と再均衡」、欧州には「軌道修正」を迫り、中東では「投資」利益重視で介入抑制、アフリカでも援助から「投資」重視へ転換する。このNSSの地域的優先順位の体系は明晰だが、実現性には不透明さが残る。
篠田英朗
2025.12.21
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取捨選択される地域ごとの戦略
すでに指摘したように、NSSにおける地域ごとの「戦略」の記述は、意図的に地位を低く設定されている。その理由は、「第4章 戦略」の「第3節 地域」の冒頭で、実際に説明されている。NSSによれば、「世界のあらゆる地域や課題に言及しなければならない」という考え方は、「戦略」的ではない。ただしNSSも、地域ごとの「戦略」が不要だと言うわけではない。「焦点を定め、優先順位をつけ」「選択を行う」ことが必要だと述べる。
西半球世界では「卓越」、インド太平洋では「競争と再均衡」、ヨーロッパでは「軌道修正」、中東・アフリカでは「投資」重視のパートナーシップだ。
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- モンロー・ドクトリンのトランプ・コロラリー
- NSSモンロー・ドクトリン再生宣言の評価
- アジア:経済的未来を勝ち取り、軍事的対立を防ぐ
- NSSアジア政策の評価
- ヨーロッパの偉大さを促進する
- NSSヨーロッパ政策に対する評価
- 中東:負担を移し、平和を築く
- 中東政策の評価
- アフリカ
- NSSのアフリカ政策の評価
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