「ドンロー主義」の概念について
「ドンロー主義」はトランプ政権が掲げた「モンロー・ドクトリンのトランプ・コロラリー」を指す通俗的呼称で、政権発の正式用語ではない。これから広まっていくのであれば、仕方がないとは思う。しかし冗談的理解は誤りで、19世紀思想との連続性と現代的変容の両面を踏まえ、多極化への地域優先型戦略として分析すべきだ。
篠田英朗
2026.01.10
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モンロー・ドクトリンのトランプ・コロラリー
アメリカのベネズエラ攻撃以降、「モンロー・ドクトリン」あるいは「ドンロー主義」という概念が、急速にメディアで広まっている。昨年12月に公表された『国家安全保障戦略(NSS)』で、「モンロー・ドクトリンのトランプ・コロラリー」が打ち出されていたことも大きい。
非常に複雑な心境だ。
私は「モンロー・ドクトリン」の重要性について、かなり前から論文を書いてきており(「重層的な国際秩序観における法と力:『モンロー・ドクトリン』の思想的伝統の再検討」、大沼保昭(編)『国際社会における法と力』(日本評論社、2008年)、231-274頁)。トランプ第一期政権が成立した2017年にも幾つか関連する考察を執筆した。当時は、トランプ大統領が執務室に飾った第7代米国大統領アンドリュー・ジャクソン大統領に引き寄せて語ったりしていたのだが。
昨年にはトランプ第二期政権と「モンロー・ドクトリン」の関係を分析する論考を、雑誌論文、ネット媒体、日本記者クラブ講演、そして単行本などで、扱ってきている。
その観点から言うと、トランプ大統領の外交思想と「モンロー・ドクトリン」の関係が、よく理解されるようになってきたのは、ありがたいことだ。