要塞化する欧州の命運:(続)小泉悠氏の朝日新聞記事と「二つの地政学理論」

 「圏域」思想を重視する「大陸系」地政学理論の思想傾向に、トランプ政権は近接している。ロシア、中国、インドなどは、それに違和感を持たないだろう。だが、欧州には混乱がある。反発心から、反ロシア派の欧州の指導者たちは、いわば欧州の要塞化に動いている。そして、逆説的ながら結果的に、「圏域」思想に近づいている。ただし覇権国がない「圏域」構想であり、現状では混乱の要素が強い。
篠田英朗 2025.03.30
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  前回のこの『The Letter』記事では、小泉悠氏が、「世界は6個か7個の勢力圏に分割されていることが望ましいと考えている」というロシア的な世界観について述べていたことを参照した。このロシア的な世界観では、「個々の勢力圏にそれぞれ『力のセンター』となる国が存在」する。「ユーラシアであればロシア、アメリカ大陸であれば米国、東アジアであれば中国、といった具合です。・・・大国とその周囲にある中小国との関係は、きわめて大国中心的になります。」

 前回の記事では、私はこの「圏域」重視の思想は、私が拙著『戦争の地政学』で「大陸系」地政学理論として説明している伝統の特徴であることを指摘した。この観点から、興味深いのは、ヨーロッパの現状である。

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  • ヨーロッパ「圏域」の浮上
  • ロシアとドイツに挟まれた東欧の位置づけ
  • 欧州「圏域」をめぐる欧州諸国の確執

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