ウクライナをめぐる三つの主要な地政学リスク

 ロシア・ウクライナ戦争が大きな地政学リスクであることは間違いない。だが論者によって重視するリスクの内容が異なっている。ここでは現在の論争の対立軸になっている二つのリスクについて整理をしたうえで、近未来に発生する恐れがある追加的なリスクについて述べておきたい。
篠田英朗 2025.02.22
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三つの主要な地政学リスク

 私は、今月中旬に4人のウクライナ人研究者との共同研究をまとめてSpringerから出版をした。https://link.springer.com/book/10.1007/978-981-96-2295-5 2022年2月に始まった「ロシアの全面侵攻」をこえて少なくとも2014年から続く戦争の様相をとらえながら、ウクライナの平和の方向性を模索するための理論的な視座も検討した。

 巷では、トランプ大統領の登場による停戦交渉の行方が大きな話題だ。新しい局面に入ってきたことは間違ない。他方、これまでの論争の性格を反映して、感情的なやり取りも多々見られる。ここでは、あらためて冷静に、ウクライナをめぐる地政学リスクを、主に構造的な観点から、三つに整理して、述べておきたい。国際法秩序の動揺、戦争継続による疲弊、ウクライナ内政の混乱、の三つのリスクである。

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続きは、3356文字あります。
  • 1.国際法秩序をめぐる地政学リスク
  • 2.戦争の継続がもたらす地政学リスク
  • 3.ウクライナ内政混乱の地政学リスク

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