深化する日本のニヒリズム(トッド『西洋の敗北』を読む1)
来週の企業セミナーでトッド『西洋の敗北』を扱うことを契機に、今回は、彼の議論の核心概念の一つである「ニヒリズム」を整理する。政策内容が空虚でも支持が集まる日本の選挙状況は、価値や真理が失われた「最後の人間」の世界そのものだ。トッドは、戦争の目的化という物理的次元と、合理性崩壊という概念的次元の二重のニヒリズムが、西洋を覆っていると論じた。日本も例外ではない。
篠田英朗
2026.02.06
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エマニュエル・トッド『西洋の敗北』における「ニヒリズム」の概念
来週実施する企業人向けセミナーで、エマニュエル・トッドの『西洋の敗北』を扱うことになっている。これは私が設定した仕組みというよりは、主催者側が選定した仕組みに、私が入ってきたものだ。トッドについては雑駁な関心を持ってきたが、論じたことがなかったので、あらためてまとめ直すにはいい機会だと思って、関心を持ってお引き受けした。
トッドは、人口動態の専門を生かして文明論的な議論を展開してきた人物で、巨視的視点で物事をとらえ直す際に、有益な現代の思想家だ。アメリカの衰退について考えている際に呼んだ『帝国以後』は刺激的だったし、ロシアのウクライナ全面侵攻にガザ危機が重なり合った時期の一昨年に公刊された『西洋の敗北』は、現代世界で起こっている事象の整理に、非常に役立つ書だ。私の拙著『地政学理論で読む多極化する世界』の内容にも影響を与えたと思う。
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- 選挙戦中の日本の状況
- 「ニヒリズム」の概念
- トッドの議論における「ニヒリズム」
- 「最後の人間」の「ニヒリズム」の世界としての現代日本
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