地政学リスクとは何か:三菱UFJ報告書を題材に

「地政学リスク」は金融用語だが定義が曖昧で、分析概念として不適切になる場合が多い。三菱UFJ報告書はトランプ政権や米中対立に焦点を当てる一方、自ら重要だとするサプライチェーンへの具体的影響分析が乏しく、台湾・中東・ウクライナの評価も恣意的で、リスク概念自体が混乱している印象を受ける。
篠田英朗 2026.01.02
読者限定

「地政学リスク」という概念の曖昧さ 

 私は、「地政学リスク」という概念が好きではない、ということを著作等で何度も書いている。もちろん、これだけ広く社会に流通していると、そんなことを私が呟いてもどうしようもない、ということもわかっている。ただ好きではないのは、あまりに概念が曖昧だからなので、警鐘を鳴らしておく必要があるとは思っている。

 「地政学リスク」というのは、「証券用語」であるらしい。そもそも証券売買に代表される金融取引は、日々取引価格が代わるのが普通の業界だ。どんな商品であれ、高騰することもあれば、暴落することもある。そうした現象に、純粋な意味で証券取引とは直接的にはかかわりのない要素が働いていることもあるだろう。それは、よくわかる。

この記事は無料で続きを読めます

続きは、6277文字あります。
  • 三菱UFFリサーチ&コンサルティング資料「地政学リスクの展望」
  • 「リスク」としてのトランプ大統領へのこだわり
  • 中東情勢
  • ロシアのウクライナ侵攻
  • 米中対立の論点
  • 台湾海峡をめぐる動向
  • 2026年の地政学リスクシナリオ 

すでに登録された方はこちら

誰でも
高市首相「パワーアジア」は対米外交の一環なのか
読者限定
ホルムズ海峡を国際法の観点から見るとどうなるのか
サポートメンバー限定
追記:イランの弾薬の早期枯渇という幻想は誰が流布させたのか:その責任
読者限定
イランの弾薬の早期枯渇という幻想の後:一時停戦はどのように終わるか
読者限定
ポスト・コロニアルの歴史観から見たときのホルムズ海峡
サポートメンバー限定
「ネオコン/親イスラエル系」ハドソン研究所の日本とのつながり
読者限定
アメリカが目指す「名誉ある撤退」
読者限定
アメリカを動かしてきた「イスラエル・ロビー」