二つの地政学理論の伝統と、二つの米中関係の描写方法

英米系地政学理論は、世界を「海洋国家」と「大陸国家」の二元対立として捉え、「G2」概念に帰結する世界観に依拠する。他方、大陸系地政学理論は、複数の「圏域」が併存する多極化世界を重視し、BRICSやSCOの世界観と結びつく。両者は対立しつつも併存し、現代の米中関係理解に異なる視角を与えている。
篠田英朗 2026.05.17
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米中関係をどう描写するか

 昨日の記事では、トランプ大統領訪中の印象深いシーンを契機にして、現代世界の米中関係をどう描写するのが適切か、という問題について書いてみた。

 一つには、トランプ大統領が好む「G2」のイメージがある。内容を精緻に説明する者がいないので、今のところ解釈は多義的にはなる。だが、いずれにせよ米国と中国という二つの超大国の間の連携を強調する世界観に依拠していると言ってよい。

 これに対して、中国は従来から「多極化する世界」のイメージを尊重してきている。BRICSやSCSが強調する世界観の基本像は、世界には二つ以上の複数の有力国がある、というものだ。

 これら二つの世界観は、どういう関係になっているのか。

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  • 英米系地政学理論の世界観
  • 英米系地政学理論にそった米中関係の理解
  • 大陸系地政学理論の世界観
  • 大陸系地政学理論にそった米中関係の理解
  • 英米系地政学理論と大陸系地政学理論の確執
  • 英米系地政学理論にとっての中国の存在の複雑性
  • 大陸系地政学理論にとってのアメリカの存在の複雑性

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