パランティア・テクノロジーズの研究(3):共同創業者兼CEOアレクサンダー・カープの「アメリカン・マインド」の復権を目指す政治思想

パランティア共同創業者兼CEOのアレクサンダー・カープは、AI時代の軍事力をソフトウェアが左右すると説き、技術者に国家と自由主義世界への貢献を求める。背景には、価値相対主義とエリートの無目的化が「アメリカ的精神」を空洞化させたとの危機感がある。シュトラウス、ブルーム、フクヤマらの思想と響き合うその主張は、共通文化と国家理念の復権を唱え、パランティアの軍事技術に非凡な価値創造の担い手を見いだす。
篠田英朗 2026.09.20
読者限定

パランティア共同創業者兼CEOアレクサンダー・カープ

 パランティア・テクノロジーズ社について扱う記事の3回目となる今回は、同社の共同創業者兼CEO、アレクサンダー・キャドモン・カープ氏が、同社のコーポレート・アフェアーズおよび法務部門を率いるニコラス・ウィリアム・ザミスカ氏とともに著した本の邦訳版『テクノロジカル・リパブリック:国家、軍事力、テクノロジーの未来』(日本経済新聞出版、2026年)を紹介しながら、ティール氏と並ぶカリスマ的実業家となったカープ氏の政治思想にふれていきたい。

 なお、これに先立ち、『アゴラ』に「書評」の形式で短めの文章を掲載していただいた(https://agora-web.jp/archives/260919213441.html )。今回の『The Letter』の記事は、内容的にこの『アゴラ』掲載文と重なるところがあるが、もう少し踏み込んで書いたものである。ティール氏は、右派としての政治的立ち位置の鮮明さが際立っている。一方、カープ氏も、政治思想・社会思想に関する学術的背景を踏まえた形で、保守主義的な思想傾向を鮮明に示している。ここでは、その点について、さらに踏み込んで考えてみたい。

この記事は無料で続きを読めます

続きは、5860文字あります。
  • 『テクノロジカル・リパブリック』
  • AI開発停止の呼びかけの拒絶
  • シュトラウシアンとしてのカープ氏の政治思想
  • アメリカ社会の現状に対する不満
  • 価値相対主義に対する批判
  • 国家への回帰の訴え
  • カープ氏の政治思想とニーチェ

すでに登録された方はこちら

読者限定
パランティア・テクノロジーズの研究(2):創業者ピーター・ティールの思...
読者限定
パランティア・テクノロジーズの研究(1):概要編・特異な政治思想を持つ...
読者限定
9・11テロ事件から25年:世界はどのように変わったか
読者限定
米国の制裁に対抗するEU「ブロッキング規則」をめぐる誤解について
読者限定
アメリカのICC制裁で混迷を深める「国際社会」の「正当性」概念
読者限定
アメリカのICC制裁:金融制裁の歴史の中で捉える
サポートメンバー限定
プーチン大統領の北方領土訪問をめぐる国際政治学者の言説についての雑感
サポートメンバー限定
プーチン大統領の北方領土訪問で強硬路線を唱える国際政治学者たち