拙著『トランプの戦争とアメリカの敗北』公刊

拙著『トランプの戦争とアメリカの敗北―イラン攻撃を招いた「ドンロー主義」の正体―』が公刊となった。アメリカの対イラン戦争やベネズエラ侵略を、トランプ版モンロー・ドクトリン=「ドンロー主義」の観点から、19世紀のアメリカの政治思想を参照して、特徴づけた。加えて、英米系地政学理論と大陸系地政学理論の世界観の葛藤の視点を取り入れ、日本を取り巻く問題についても論じた。
篠田英朗 2026.06.01
誰でも

 『The Letter』で断続的に書き続けてきたアメリカの対イラン戦争、ベネズエラ侵略、トランプ版モンロー・ドクトリン、地政学理論から見た現代世界、日本の置かれた状況などを、整理して一冊にまとめたものだ。

 題名と表紙は、出版社のビジネス社さんが作ってくれたものだ。そこで表現していただいた本書の特徴の一つは、トランプ版モンロー・ドクトリン=「ドンロー主義」の性格を、19世紀のアメリカの政治思想を参照しながら特徴づけたうえで、ベネズエラ侵攻のみならず、対イラン攻撃も、その視点にそって位置づけたことだと思う。背景には、英米系地政学理論と大陸系地政学理論の世界観の葛藤の問題がある。

 ご覧いただいた方からは、内容に関するご意見を是非お聞きしたい。

 以下が、章立てである。

はじめに

第Ⅰ部 衰退するアメリカ

 第1章 対イラン戦争の罠

   技術に溺れた賭け

   すでに消滅した「法の支配」

   イランの「長期消耗戦」戦略

   イランに失うものは少ない

   「体制転換」は非現実的な空想

   ドルの地位を揺るがす恐れ

   超大国アメリカの犯した判断ミス

   技術的優位を過信した驕り

   自己中心的な世界観

   危険な宗教的熱情

   いたずらに積み上がる犠牲と出費

   クルド人「代理戦争」は妄想

   アメリカとイスラエルの「特別な関係」が衰退を招く

   イスラエル・ロビーに操作されるアメリカ

   戦争の構図の泥沼化

 第2章 進行するアメリカの国力低下

   アメリカ主軸の20世紀国際秩序

   秩序の変異は不可避

   1970年代に始まった衰退

   勢力均衡の組み換え

   同盟国の協調体制を生んだプラザ合意

   冷戦勝利をもたらした同盟諸国の政治・経済力

   ユートピアを打ち砕いた9・11テロ

   巨額の財政負担と進むアメリカ離れ

   威信を失墜させたウクライナとガザ危機

   イランとロシアをつないだ制裁

   ドル防衛に危機感を募らせるトランプ大統領

   時限爆弾を抱えるアメリカ

第Ⅱ部 トランプのドンロー主義とは何か

 第3章 政策文書から読み解くドンロ―主義

          トランプ大統領にとっての「偉大なアメリカ」

   国家安全保障戦略(NSS)の問題意識

   アメリカの「死活的国益」とは

   アメリカの覇権が強化される条件

   N S Sで示された10の原則

   西半球が最大の優先地域

   アジアは主要な競争の舞台

   ヨーロッパに「強さ」の復活を求める

   中東はアメリカのビジネス・パートナー

   関心の薄さが目立つアフリカ

 第4章 政治外交思想史から読み解くドクトロ―主義

   モンロー・ドクトリンの思想伝統

   源流となったワシントン大統領の離任挨拶

   欧州を切り離したモンロー大統領

   「大陸主義」のドクトリン

   対イラン戦争に通じる「明白な運命」論

   帝国主義的政策の復活

   ドンロー主義が抱える限界

第Ⅲ部 多極化世界とドンロー主義

 第5章 地政学から見た国際秩序の変質

   退潮する「英米系地政学」

   対立する二つの地政学理論

   イギリスが展開した「グレート・ゲーム」

   海洋諸国によるネットワーク連合の形成

   普遍主義へ転化した「自由主義」

   多極化世界を見据えたB R I C Sの台頭

   新たな「大国クラブ」

   着目される「脱ドル化」の動き

   根底が揺らぐ国際秩序

 第6章 大局的見取り図が欠如した対イラン戦争

   中東の覇権を狙ったイスラエル

   海洋国家と大陸国家がせめぎ合う最前線

   「悪の枢軸」と位置付けられたイラン

   中露が重要なパートナー国に

   イランは朝鮮戦争以来の手ごわい敵

第Ⅳ部 変動する北東アジアと日本の対応

 第7章 日米関係の変遷と日米同盟

   日米関係の変遷と日米同盟

   対米依存を強める日本

   海洋国家連合に興味のないアメリカ

   日米同盟の意味の再検討

   日本にとってアメリカとはどんな国か

   ローズベルト大統領が示した見解

   戦時に高まった「アジアのモンロー主義」

   「大陸国家」への転機となった満州国成立

   「圏域」確立を狙う中国

 第8章  日本を取り巻く台湾危機 

   日本が対峙する三正面の敵

   求められるのは抑止力

   高市首相「台湾有事」発言の意味

   日本の国益は台湾海峡の「現状維持」

 おわりに

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